
「え〜〜〜、ちょっと待って・・・」
待たせる人は誰もいない車内で、独り言を言い、車を停めて、海沿いに近寄った。
初めて訪れた地域の、朝の空気とスケール感が、なんとも心地よい。
太陽の光を帯びた巻積雲(けんせきうん)を見つめているうちに、まるで自分が雲を描いているような気分になり、小刻みに筆で色を乗せていくような気持ちで、気が済むまで想像の世界を楽しんだ。
そこから少し車を走らせた漁港で、何かに誘われたような気持ちで車を止めると、道の向こうからバッサバッサとダイナミックな物音が聞こえてきた。


美しい羽根に目を奪われた。
最初は鳥同士が縄張り争いでもしているのかと思ったが、あまりの大きさに、
「恐竜?に見えちゃうけど、猛禽類かな?」
とまた独り言。先ほどの空想の世界からまだ少し抜けきれないでいる。

注意深く観察していると、1羽のカラスが、嬉々として木の実を食べていることがわかった。


こんなに嬉しそうなカラスを見たのは、人生で初めてだった。
その様子は、一人時間を満喫していた自分を見ているみたいで、妙な親しみが湧き、テレパシーで会話するような感覚で、しばらくその姿に釘付けになっていた。
それから、どうにも探検心が止まらず、車一台がやっと通れるような道を進んで行くと、大きな水たまりに、何かがいる!


迫り来る車の存在なんて全く気に留めず、仲間も寄ってきて、泥水を謳歌する雀たちだった(笑)

泥遊びをする幼い頃の息子を思い出して、
「やっちゃったね」と困り顔でうんうんと頷いてしまう。
ここでも、2羽の気が済むまで見守ることにした。
やっと道が空いたので、先に進んで行くと、今度はおひとり様の鳩が、行先をご機嫌そうに散歩している。一度飛び立ったのに、この道が良かったらしく、舞い戻ってきた。

車でゆっくり近づいても、気に留める様子もないので、その「るんるん」した足取りを観察しながら、またしばらく鳩のお散歩を見守った。


草むらでご飯を見つけたようで、最後は草むらに入って行った。
「マイペースだね(笑)」とつぶやきながら、これもまた自分みたいだったなと、後からじわじわ親近感が湧いてきた!

大自然の中には、見過ごせない瞬間が溢れていて、ぽっかりと空いたひとり時間を豊かにしてくれた。そして、「慈しみながら待つ時間」の素晴らしさも心に火を灯していった。
あの時間を思い出すと、今でもうっとりと目を細めてしまう。
ライター
首里石鹸 白鳥恵子